さびときどききじ

静岡県掛川市の、きたがわ動物病院の獣医師によるブログです。業務とは無関係な記事の方が多いかもしれません。子供3人、猫3匹を養いつつ、木工、庭づくり、料理など、手作りにも果敢に挑戦しています。

春からのフィラリア予防についておさらいしましょう

こんにちは。

 

お正月気分も終わり、寒さに身も心もひきしめられつつ、今年も頑張っていきたいと

思います。

 

さて季節はまだ冬ですが、春からのフィラリア予防について、おさらいがてら

ご案内します。

 

フィラリア症は、蚊を媒介とする寄生虫感染症です。

フィラリアを持つ蚊にわんちゃんが刺されることで、蚊の唾液を通じてフィラリアの子虫がわんちゃんの体に皮膚から侵入します。

フィラリアの子虫は1か月ほど皮膚の下などの組織にとどまり、成長を繰り返しながら血管内へ侵入し、血液を養分として成虫になり、最終的には、わんちゃんの心臓(肺動脈や右心房)に寄生し性成熟して親虫になります。親虫は短めの素麺のような外観です。そのサイズの虫が何匹も心臓に寄生しますと、当然血液の循環に影響を与えますので、循環器系の症状が出ます。

さらに、親虫というからには、血液中に子供の虫を産出します。この子供の虫(ミクロフィラリアといいます)を血液中に持つわんちゃんを、新たに蚊が刺して吸血することにより、その蚊にフィラリアが入ることになります。

こうして、わんちゃんと蚊の間でフィラリアの生活環が成立します。

 

掛川市内では、予防をしていないわんちゃんで、ちらほらとフィラリア症の子が見られますので、是非予防していただきたい感染症です。

 

さてその予防薬ですが、大きく分けて、

①月に1回食べるお薬(おやつタイプ、錠剤)

②1度の注射で予防効果が1年間続く、注射タイプ

③月に1度つけるタイプ

 があります。

それぞれについて、簡単にご紹介します。

 

①は、最も多くの方が選ばれる予防方法かと思います。

「月に1度」を12月まで忘れずに続けられる方には、手軽でおすすめです。

 内服タイプには、様々な種類のお薬が発売されています。

ノミ・マダニの予防成分も含まれているものも数年前から発売されており、人気があります。こちらに関しては別項にてご紹介していきます。

 

②の注射タイプは、①を与え忘れてしまう方におすすめです。

数年前の発売から、年々打つわんちゃんも多くなったかと思います。

注射ですので、以下にお伝えするように注意点がいくつかあります。

 

*若齢または高齢のわんちゃん、持病の有無によっては打てない場合もありますので、ご相談ください。

 

*注射の場合、他のワクチン(混合ワクチン、狂犬病ワクチン)とは4週間ほど間隔をあけることが理想ですので、ご自分のわんちゃんの注射の流れを一度確認しておきましょう。

例えば、「フィラリア予防は4月、狂犬病は5月、混合ワクチンは6月」のように、流れを確認しておくといいと思います。

 

*混合ワクチンや狂犬病ワクチンは年間をとおして接種ができますが、フィラリアの注射は、製剤の特性上、当院では春の短期間のみ接種を受け付けています。

フィラリア予防の注射を希望される場合は、この間に他のワクチンより優先して打つ必要がありますので、やはり予防接種の流れをよく把握しておきましょう。

 

③のつけるタイプは、主にネコさんのフィラリア予防に使われています。

わんちゃんにも使えますが、フィラリアの予防だけを考えると金額的には割高になりますので、メジャーな方法ではありません。ただ、注射や内服を嫌がる子には、おすすめです。

 

ここまで、予防の方法についてお話しました。

おおざぱに言えば、「月に一度の内服か、注射か、またはつけるタイプか」の選択をまずしていただくといいです。

 

多くの方が選ばれるのが、①の内服タイプになるかと思いますので、内服薬のタイプ

についてお話しします。

内服薬は、大きく二つにわかれます。

ひとつは、フィラリア予防だけのもの、もうひとつは、フィラリア・ノミ・マダニ全てを一度に予防できるオールインワンタイプのものです。

 

いろいろなお薬が発売されていますが、当院で常時扱っているお薬をご紹介していきます。

 

 

まずは、フィラリア予防だけのものです。

一番メジャーなお薬は、お肉タイプのものです。

こちらはフィラリアとお腹の虫(回虫、鈎虫)の駆虫ができますが、主にフィラリアの予防薬としてメジャーなお薬です。余談ですが、駆虫成分のイベルメクチンは、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生が静岡県のゴルフ場の土壌菌から発見したことで話題となりましたね。イベルメクチンは、ヒトの病気以外にもワンちゃんの感染症予防にも重要な役割を果たしています。

 

 その他、錠剤タイプもあります。錠剤が確実に飲める子であれば、金額的にも安いのでおすすめです。

 

 

次に、ノミ・マダニの予防もできるオールインタイプのお薬をご紹介します。

 

こちらは、フィラリア・ノミ・マダニの予防効果が一粒にまとめられているお肉タイプのお薬です。

ノミ、マダニはつけるタイプのお薬で予防することが多いですが、フィラリア薬をあげて、ノミ・マダニ薬をつけて・・と手間が増えると大変だと感じる方にはおすすめです。多頭飼育の方、つけるタイプを嫌がるわんちゃんにおおすすめです。

 

 

フィラリア症は、わんちゃんの感染症の中でも是非予防していただきたい病気です。

冬の間に、春からの予防について整理しておくといいですね。

なんだか頭がこんがらがって・・・という方は、ご相談ください(笑)。

 

 

フィラリアと併せて予防したい寄生虫として、ノミ・マダニがあります。

特にマダニは近年ヒトの感染症の原因としても有名ですね。

お散歩で草むらによく入る子、ドッグランやほかのわんちゃんとの接触が多い子などは、予防をすることをおすすめします。

マダニの予防は、春先の気温にもよりますが、近年では掛川では3月中旬頃から発生が見られています。3月はつい予防をわすれてしまいがちですが、フィラリア予防よりも先にマダニの予防が必要なエリアもありますので、気をつけましょう。

マダニの予防については、次回に掲載したいと思います。

 

1~2月は、猫さんで膀胱炎や尿路系の疾患での来院が増えます。

お水を飲む量や、排尿量や排尿の様子におかしなことがないか、気をつけましょう。