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さびときどききじ

静岡県掛川市の、きたがわ動物病院の獣医師によるブログです。業務とは無関係な記事の方が多いかもしれません。子供3人、猫3匹を養いつつ、木工、庭づくり、料理など、手作りにも果敢に挑戦しています。

ウサギさんの感染症〜エンセファリトゾーン

うさぎ 診療

こんにちは。

雨、雨、曇り、雨…。
そんな毎日が続いてますね。
 
今回は、ウサギさんの難しい神経疾患、エンセファリトゾーン感染症について書こうと思います。
エンセファリトゾーン…長い名前ですよね。別名ノゼマというので、以下ノゼマと表現します。個人的には、ノゼマの方が馴染み深い呼び名です。
 
この病気の原因は、原虫です。
原虫というのは、簡単に言うと、細菌より大きい寄生生物ということになるかと思います。
ひとのマラリア、猫のトキソプラズマも原虫による感染症です。
 
さて、ウサギさんのノゼマ原虫は、実は健康で無症状のウサギさんでも感染していることがあることが分かっています。この状態を、不顕性感染と呼びます。
海外のペットウサギでの感染率は、50〜80%という高い数字が報告されているようで、国内でも蔓延の可能性が気になるところです。
 
ノゼマに感染しているウサギの尿中に原虫の胞子が排出され、他のウサギがそれを経口摂取することにより体内に取り込まれ、全身特に中枢神経に潜伏します。
繁殖施設で、感染した同居うさぎ(母親)の尿を介して子ウサギに感染してしまうケースが多いかと思います。
 
健康なウサギでは、無症状で経過しますが、ストレスや免疫力低下などの誘因で、徐々に発症します。
最も分かりやすい症状は、斜頸(首を片方に傾げたまま戻らない状態)、ローリング(体が左右に回転する状態)などの異常な姿勢や眼振(眼球が揺れている状態)です。これらは、姿勢を保つ中枢神経が原虫により炎症を起こすことが原因です。
その他にも、後肢の麻痺や排尿障害などの脊髄症状、激しい症状としてはてんかん発作などがあります。
 
これらの症状があった場合、ノゼマとそれ以外の疾患(話が多岐にわたるため、今回は割愛します)を鑑別する必要がありますが、ノゼマの決定的な単独の診断方法は、現在のところありません。数年前から、血液検査による抗体価検査が日本でもできるようになりましたが、不顕性感染が蔓延していることを考慮すると、検査結果と症状などを総合して推測的に診断するのが現状かと思います。
 
つぎに、ノゼマの治療についてです。
完治させるには、ノゼマ原虫を完全に駆虫しなければなりません。
近年、フェンベンダゾールという駆虫薬がある程度有効であることが分かっているものの、100%ではありません。
ノゼマによる脳炎を発症してしまっているウサギさんを完治させるのは、現状では難しいと言わざるを得ません。
その他の治療はあくまで対症療法・支持療法に過ぎません。
 
 
ウサギさんは今や、犬猫に次いで飼育の多いペットですが、飼育方法やブリード段階での感染症予防の体制などはまだまだ浸透していないと思います。
病気やその治療法も犬猫に比べてはるかに遅れています。
ノゼマに関しても、国内での研究がもっと進めば、治療法、予防法、予防の体制も確立できるのではないかと思っています。
 
長くなりましたが、飼い主の皆様にも是非、この病気について知っておいていただきたいと思い、記事にしてみました。
今後ともペットウサギさんの地位向上のため、頑張りたいと思います。
 

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